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郡司ななえさん(原作)インタビュー(映画「ベルナのしっぽ」パンフレットより抜粋)

−−原作者として、映画版「ベルナのしっぽ」をご覧になった 感想はいかがですか?
 
郡司

 私の書きました「ベルナのしっぽ」は、「盲導犬についての啓蒙物語」ではありません。もちろん盲導犬についての最低限の知識を広くみなさんに持ってもらうことは、すごく大切だと思うんですよ。でも、この物語で私が本当にみなさんに伝えたかったことはそれだけではなくて。人間と犬との生活を通して「どんなことがあったって生きるって、やっぱり素敵なことなんだよ」という気持ちなんですね。その部分は、映画でもすごくよく表現されていたと思います。

 それぞれの人が、毎日を一生懸命に生きる。それはきっと、誰か大切な人と‘生き合う’ことにもつながっていく−−。これまで私が書いてきた本も、各地で開いてる「お話しの会」も、そして今回の映画もそうですが、表現したいのは「心を通わせあって生きていくすばらしさ」じゃないかと思います。

 たまたま私は二十代で目が見えなくなったので、ベルナや ガーランド、ペリラという“しっぽのある娘たち”と一緒に生きてきたというだけで。誰かと向きあって生きているのは、みんな同じですものね。

 
−−郡司さんがとりわけ印象に残ったシーンというと?
 
郡司

 とくに心に残ったのは、しずくが夫の隆一に子供を持ちたいという夢を語るシーンでしょうか−−。「6歳になったら、大きなランドセルをしょって学校へ行くの。“パパ、ママ、行ってくるよ”って。“パパ、きれいなお花が咲いているよ”とか、“お空がとっても高いよ”って。私たちには、一生見えない世界。でも、その子は大きな瞳で受け入れていくの」

 そんな彼女の台詞からは、切ない思いがすごく伝わってきて、やっぱりジーンと来てしまいました。

 もう一つ、個人的にとっても嬉しかったのは、この映画のラストを「ガーランド」という私の二頭目の盲導犬の物語につなげてくださったことなんです。実際には彼女は、3歳2ヶ月で亡くなってしまったんですが、私にとってはベルナや、いま一緒に生活しているペリラと同じように大事な“娘”だったんですね。映画「ベルナのしっぽ」でも、ベルナは亡くなり、最後に夫の隆一さんもいなくなってしまう。では、物語はそこで終わってはいないんですよね。いろいろ辛いことはあったけど、しずくは新しいパートナーと組んで、もう一度新しい家族を作って生きていこうと決意する−−。そういう、希望を感じさせるラストになっていますよね。その象徴として、スクリーンに“ガーちゃん”が登場したことが、私にはとっても嬉しかった。これは、盲導犬の“母親”である私個人の思い入れなんですけれどね(笑)。

 
−−いろんな意味で、未来につながっていくラストシーン になっていますね。
 
郡司

 本当にそう思います。ですから、「ベルナのしっぽ」という物語を知っている人もそうでない人も含めて、いろんな方にこの映画を観ていただきたい。社会の歪みのなかで縮こまってる人、光が当たらなくて苦しんでる人、言葉に出せない辛い思いを抱えている人、そして人生に絶望している人。そういう人に、人生の素敵さが少しでも伝われば、原作者としてすごく嬉しいですね。